ここでは個人的に好きなアーティストの楽譜のレビューをしていきます。定番の本には見出しに[定番]、おすすめの本には[オススメ!]としています。
こちらの記事をきっかけに、あなたに合う1冊が見つかれば幸いです。
取り上げている書籍の中にはすでに絶版のものが含まれている場合があります
『The Beatles Complete Scores』The Beatles [オススメ!]
こちらは、ロックの教科書ともいうべきビートルズの楽譜です。
ビートルズに影響を受けた日本のアーティストは数知れず、例を挙げるなら、Mr.Childrenの桜井和寿さんや奥田民生さん、矢沢永吉さん、ユーミンさんなどなど。枚挙にいとまがありませんが、ビートルズは作曲においても避けては通れないアーティストといえます。
こちらの楽譜の出版元である「HAL LEONARD」は数々の海外アーティストの楽譜を出版していますが、基本的にはメロディ、コード、ベースのみで構成されています。
ただ、こちらの楽譜は「バンドスコア」になっていますので、タブ譜付きのギターやドラム、その他楽器についても掲載されています。
「Yesterday」「Hey Jude」「Help」「Love Me Do」などなど有名どころはもちろんのこと、「Complete」とあるように、その他の楽曲も多数掲載されています。
個人的にバンドスコアは、1冊は絶対に持っておいた方が良いと思っていて、それならやはり幅広い世代で親しみのあるビートルズが一番ではないかと思います。
また、バンドスコアをMIDIで打ち込むと、打ち込みスピードだけでなく、アレンジ能力もついてきますので一石二鳥です。
楽譜にしてはかなり値段がはり、分厚くなっていますが、作曲を志す人は持っておいても損はしないでしょう。
『ピアノ弾き語り Come Away With Me』Norah Jones [オススメ!]
一番の作曲の教科書は「楽譜」です。楽譜はアイディアの宝庫です。アイディアに行き詰ったら、私はいつも楽譜を見て解決します。中でもお気に入りの楽譜を持っておくと、作曲がはかどります。
自分の曲にJazzフレーバーが欲しいなぁと思っている方は、Norah Jonesの『Come Away With Me』のCDと楽譜を購入しましょう。彼女の楽曲はJazz感満載です。
Jazz感ってどうやったら出るんだろう?と疑問に思えば、『Come Away With Me』の楽譜の中に答えが書いてあります。
テンションコードであったり、独特のボイシング、シンコペーションのリズム、ブルーノートなどなど、これらを自分の楽曲に採用すると、Jazz感がみるみるでてきます。
こうしたい!と思ったら、それに近い楽曲の楽譜を見れば答えが見つかります。
Jazz感を出したい、という方にオススメの楽譜です。
『Greatest Hits 1970-2002』Elton John
同名のアルバムCDに準拠した楽譜になっています。ただ楽譜独自の、CDにない作品も見受けられます。
「Greatest Hits」というだけあって、Elton Johnの代表作「Your Song」「Candle In The Wind」「Goodbye Yellow Brick Road」等が収録されています。
収録パートは大きく分けて、メロディ譜とピアノ譜(ベース含む)になっています。
Elton Johnは基本的にピアノの弾き語りスタイルなので、ピアノ中心の作曲において非常に参考になるかと思います。
ピアノソロでも可能なように作られているため、ピアノ譜の中にもメロディが入っていますので、完全な弾き語り用というわけではありません。
※ただ小節や拍ごとのボイシングはある程度わかるように設計されています
コード進行(コードネーム・ダイアグラム)も併記されていますのでギター弾きの方でも参考になります。
ある程度アレンジはされているかもしれませんが、そんなに複雑なコードやコード進行ではないので、作曲教材としても参考になるでしょう。
Elton Johnファンのみならず、ピアノの弾き語りをイメージした作曲をしたい方にお勧めできる内容です。
また、購入する場合はこの楽譜のみではなく、同名のアルバムCDも購入しておくことをお勧めします。
『Purpose』Justin Biever
世界で最も売れているアーティストといってもよいジャスティン・ビーバーのアルバム「Purpose」に準拠した楽譜です。
ソフトバンクのCMでおなじみの「What Do You Mean?」も収録されています。
ジャスティン・ビーバーの作品は全体として割とシンプルにできていて、使われているコードもトライアドであったり、ダイアトニックコードがほとんどです。
何曲も作っていくと、どうしても難しいものにしようとしてしまいがちで、それが結果的に自分の首を絞めてしまうことがよくあります。
ただこの楽譜を見ると、モード(通常のメジャー/マイナースケール以外のスケール)で作られている作品(「What Do You Mean?」がまさにそう)が多々見られます。
いま世界をリードする音楽というのはどのような構造をしているのかを知る、貴重な楽譜といえます。
収録曲数は18曲分と多く入っています。
通常の冊子版とKindle版があり、値段自体は冊子版の方が安いですが、Amazonのポイントを加味すればKindle版の方が安くなります。
冊子版は場所を取るので、個人的にはKindle版を注文しましたが、ところどころ楽譜の大きさが小さくなっていたり、一部タイトルがなかったりで、不具合がいくつか見つかりました。アップデート等で改善されることを期待しています。
※iPadのアプリだけかもしれませんが
冊子版の方が書き込み等できるので、場所をあまり気にしない方は冊子版をお勧めします。
『21』Adele
最近のチャートの上位は「エレクトロ系」や「ダンス系」が多い中、昔ながらのSoul系ミュージックがトップを維持していました。その曲はAdele(アデル)の『Rolling In The Deep』です。
その曲が収められている楽譜が、アルバムと同名の『21』です。
Adeleの楽曲は全体的にシンプルです。後で紹介するJamiroquaiとは違って、難解なコードを使わず、基本に忠実なコード進行で組み立てられています。
しかし、Adeleの楽曲はシンプルさを感じさせません。「シンプルな曲をシンプルに感じさせない」というのが、作曲者の腕の見せ所だと思います。
「シンプルでも良い」ということを再認識させてくれる楽譜ですので、難しい音楽を作ろうとあれでもない、これでもないと悩んでおられる方にはおすすめです。
また、彼女は歌唱力もすごいので、同名のCDも購入してみましょう。グラミー賞を受賞しただけあって、名曲が揃っています。
なんだか昔のジャニス・ジョプリンを感じさせます(そこまでSoulではないかも?)。
『High Times Singles 1992-2006』Jamiroquai
Jamiroquaiのベストシングル集『High Times Singles 1992-2006』の楽譜です。
Jamiroquaiのコード進行は特殊で、平行和音やテンションコード、ノンダイアトニックコードをバンバン使ってきます。
ところどころ、調性(キー)を無視したコードや、Funk系やJazz系によく使われるスケール「モード」を使ってきますので、Jazz寄りのサウンドになります。
Jamiroquaiはたまに難解なコードを出してくるので、案外音楽って何でもありなんだなということがわかります。
自分なりにアナライズ(楽曲分析)してみるものの、一体なぜこのコードを使っているの?というのがよくあります。
しかし不思議なことに、そんなコードでもサウンドに溶け込んでいるんです。
やはり、コードそのものというより、あくまで使い方を間違わなければ、どんなコードでも使えるということではないでしょうか?
Jamiroquaiの楽曲は、キーボード(ピアノ)とベースに特徴があります。中でもピアノのテンションボイシングは、自分にとってとても勉強になりました。
かなり難しい曲が多いですが、もっと複雑なコード進行にしたい!という方にはおすすめだと思います。
『The Diary of Alicia Keys』Alicia Keys
彼女の楽曲はジャンルで言えば「R&B」ですが、クラシックピアノを習っていたこともあって、あまりゴリゴリのR&Bではありません。
ところどころアコースティックピアノが使われていて、日本人にとっても聴きやすい作品が多いと思います。
また、ピアノ伴奏のボイシングもためになります。
特に難しいコードは使わず、ダイアトニックコード中心で組み立てられています。
彼女のピアノをシミュレートした『Alicia's Key』というピアノ音源が、Native Instruments社のKONTAKT用のソフトとしてあります。一時期は私はその音源を主要ピアノ音源として使っていたこともあります。
「R&B」はあまり聴いたことがないという方や、「R&B」テイストを自作曲に生かしたい方は、同名のCDとこちらの楽譜を購入してください。