ここではジャンルに特化したアレンジに関する本のレビューをしていきます。定番の本には見出しに[定番]、おすすめの本には[オススメ!]としています。
こちらの記事をきっかけに、あなたに合う1冊が見つかれば幸いです。
取り上げている書籍の中にはすでに絶版のものが含まれている場合があります
『DTMerのためのド派手なバンドアレンジがガンガン身に付く本』熊川 ヒロタカ/石田 ごうき著
こちらの本はタイトルの通り、「ド派手なバンドアレンジ」を目標にしてアレンジしていくというものです。
アレンジする楽器は「ドラム」「ベース」「ギター」「ピアノ」です。それぞれの楽器単体を「ド派手」にするというのではなく、4つの楽器を1つの楽器のように組み合わせて「ド派手」にしていくというイメージです。
DTMを使ったアレンジ書は、大抵いろんなジャンル(バラード・ポップ・ロック・ラテン系など)のアレンジ例を見ていくというものが多いですが、こちらはアニソンのようなキュートなポップソング1曲をサンプルとしてアレンジ例を見ていくという形になります。
そういったジャンルを目指されている方にはお勧めと言えます。
アレンジを行う際に心がけるべきこととして、「明快なビートを打ち出すこと」と「歌えるフレーズを散りばめること」を挙げておられます。
「明快なビートを打ち出すこと」というのは簡単に言うと、その楽曲の芯となるグルーヴを明確にするということです。
「歌えるフレーズを散りばめること」というのは、主旋律(歌メロ)だけでなく対旋律にも気を使っていこうことになります。もちろん、主旋律を邪魔しないことが求められます。
また、その2つの心がけ以外にも「足し算(音を足していく)」「引き算(不要な音を取り除く)」「掛け算(音を組み合わせる)」「割り算(ある音を引き立たせる)」という4つの考えを持つべきだとされています。
サンプル音声(MIDIデータも)とピアノロール画像、楽譜が掲載されていますので、わかりやすい構成になっています。
アレンジしていく手順も明確になっていますので、プロのアレンジャーの方のアレンジ方法を知ることができる価値ある本だと言えます。
『DTMerのためのアレンジのお作法』藤谷一郎著 [オススメ!]
こちらの本は「ゆうやけこやけ」のシンプルなメロディを10ものジャンルにアレンジしていくというものです。
その10ジャンルとは・・・フォーキーポップス、エレクトロポップ、パンクロック、ボサノバ、エレクトロハウス、バラード、EDM、ジャズ、R&B、ブラジリアンハウスになります。
前半は、アレンジの基本的な考え方や、各楽器(ドラム・ギター・ベース・キーボード、ストリングス)の特徴や打ち込みポイント、楽曲の構成について言及されています。
中盤以降から各ジャンルで「ゆうやけこやけ」のアレンジをしていきます。
各ジャンルの特徴をわかりやすく説明されておられますし、その内容に沿ってアレンジされていますので、「それっぽさ」を出すヒントになる部分が多いはずです。
コード進行も各ジャンルに合ったようになっていますので、一つのメロディでこんなにコード進行が考えられるのか!と思われるはずです。
もちろん、サンプル音声も付属しておりますし、またMIDIファイルも付属しています。
ちなみにサンプル音声は、Native Instruments系、Real Guitar、Spectrasonics系、Logic Pro付属の音源やエフェクトが使われていますので、全く同じものを再現するにはそれなりの費用がかかりそうです・・・
本の中でもピアノロール画面や譜例が表示されている箇所がありますので、視覚的にもわかりやすいのではないかと思います。
難点なところは、割と音程に関する知識がでてきますので、音程について知らない人は難しく感じられるかもしれません。
また、ところどころ複雑なコードが出てきて、なぜそのコードが使えるのかなどはあまり詳しく説明されていません。
ですので、全く音楽理論について知らない人はすべてを理解するのは難しいかもしれません。
ただ、著者は音楽大学や音楽の専門学校に通ったことがないそうなので、独学で理解するというのもできなくはないかもしれません。
いろんなジャンルのエッセンスを知るという意味ではお勧めできる本です。
『DAWトラック・メイキング クラブ・ミュージック的作曲術』Watusi著
まさにアレンジャー向けの本です。
ハウス、テクノ、エレクトロ、ヒップホップ/R&B、ダブステップ、ドラムンベースのジャンルを扱った、ダンス・クラブ系に特化した内容です。
本のタイトルに、「トラック・メイキング」や「作曲術」という言葉があるので、音楽理論的な部分があるように思えますが、どちらかというと作曲の後のアレンジ(編曲)に重きを置いています。
なので、どうすればそのジャンルっぽさをだせるか、どうアレンジすればそのジャンルになるかを勉強する本と思っておいてください。
「ビート(リズム)⇒ベース⇒上もの(コード)」という流れで解説されています。
付属CDにはドラム各キットのエフェクトをかける前とかけた後の例、ベースや上もの(コード系楽器)のMIDIファイルやサンプル音源が入っています。
またピアノロール画面やエフェクトのつまみ画面等、画像も多用されているので、視覚的にもイメージがつかみやすいと思います。
この本は本格アレンジ向けですので、初心者の方や作曲方法について学びたい方には向いていないです。