通信制作曲スクール『作曲ラボ』には多種多様の音楽歴の方が来られます。その中には「音楽未経験」の方もいらっしゃいます。
ただ、同じ未経験でもレッスン内で作曲が上達していく方と、伸び悩む方がいらっしゃいます。ここでは何がその差を分けているのか見ていきます。
この記事は下記のような方にオススメです。
こんな方にオススメ!
- 音楽未経験だけど作曲がしてみたい!という方
- 作曲を勉強してみたいけど音楽未経験なので不安という方
- 作曲し始めたものの、今一つ自分の作品に自信が持てない方
それでは早速見ていきましょう!
音楽未経験でも作曲が上達する人に共通するポイントとは?

当スクールではこれまで数多くの生徒様とレッスンさせていただきました。
今現在・過去にバンドをされておられる(た)方、今現在楽器のレッスンを受けている方、独学で楽器演奏や理論を勉強されている方など、音楽経験は多種多用です。
もちろん「音楽未経験 (小・中学校の授業は除く)」という方もいらっしゃいます。ただ、同じ音楽未経験の方でもレッスンを経るごとに作曲が上達していく方と、すぐに伸び悩む方がいらっしゃいます。
どうしてこのような差が出てしまうのかをずっと考えていましたが、一つの答えが見つかりました。
それは、「そもそも普段から音楽を聴く習慣があるか?」という部分です。
つまり、音楽未経験でも普段から音楽を聴く習慣を持っている人は上達が速く、普段から音楽を聴く習慣がない方はいくら方法論を身に付けても作曲がなかなかうまく進まない傾向にあります。
これは普段から漫画を読まない人がいくら方法論を身に付けても漫画がすぐに書けるわけではないでしょうし、また普段から小説を読まない方がいくら方法論を身に付けたからと言って小説がすぐに書けるわけではないのと同じと言えます。
もちろん一部の天才はそういった経験がなくてもプロになった方はいらっしゃるでしょうが、やはり大半の方は実際の作品に接した経験(時間)と、自分の作品のクオリティは比例していると言えます。
音楽を聴くことが作曲に及ぼす影響とは?

音楽を聴く習慣のある人がなぜ作曲が上達しやすのかというと、やはり「自分なりの心地よい響きや音の流れを身に付けている」からと言えます。
音楽を聴く習慣のない人はその「自分なりの心地よさ」という感覚が身に付いていない(はっきりと定まっていない)ため、自分の作っているものが「音楽」になっているのか、はたまた「ただ音を並べたもの」なのかの判断ができません。つまりいつまで経っても手探りで「音を並べていくこと」に終始してしまいます。
一方普段から音楽を聴いている人はこれまでの音楽の視聴経験から「自分なりの心地よさ」を持っているため、こう動かしたら自分なりにあまり良く感じないなとか、こういう流れは自分は好きだなといった判断ができます。つまり到達点が明確なため、方法論とプラスされて上達も速くなります。
以前、お笑い芸人の又吉直樹さんが芥川賞を受賞されました。当時は「お笑い芸人が芥川賞?」と偏見のあるコメントをよく見かけました。
ただ、又吉さんはかなりの読書家で、その読書経験の中で自分なりの心地よさや言葉選び、物語の展開方法等を身に付けられたものだと思います。ですので、個人的には又吉さんの芥川賞受賞は決して偶然の結果だと思っていません。
市販の作曲本では上達しない方が多い理由

おそらく作曲を始めたいと思ったときに手っ取り早く市販の作曲本を購入して始めるという方が大半だと思います。ただ、そういった本を読んでもうまく作曲ができなかったという方も多いはずです。
やはり本では各読者の「自分なりの心地よさ」までは考慮できませんので、一般論としての音楽理論の紹介だけで終わってしまいます。また、読者も「書かれているまま音を入れるだけ」に終始してしまいがちになります。
音楽理論を意識して作ることは大切ですが、そこにオリジナリティ(自分なりの心地よさ)がないと、無味乾燥な音の並びを作っているに過ぎません。
そういった意味では、音楽作品は各作曲家の「自分なりの心地よさを披露したもの」と言えます。
「自分なりの心地よさ」を身に付けるために

これまで繰り返しているように、自分なりの心地よさを身に付けるには「音楽を聴く習慣」を持つことです。
まずは手あたり次第自分が好きな作品を10曲くらい集めてみましょう。
10曲も集まらないということなら、好きなアーティストを1人選んで、アルバムCDを順番に聴いていきます。何となくこの曲好きだなと感覚的にピックアップすればよいので、最初のワンコーラス(1番)のみで判断するような形で大丈夫です。
音楽の好き嫌いは食べ物の好き嫌いと同じで、他人に教えてもらって判断するものではありません。ですので、他人にオススメされたものではなく、実際に自分で聴いて判断していきましょう。
そして10曲集まったら、それら好きな曲をきっかけとして日々音楽を聴く習慣を身に付けていきましょう。この場合は必ずフルコーラス全部を聴きます。
何かに注意しながら聴いていくというよりは、最初は純粋にその作品を楽しむ目的で聴いてみてください。もちろん、BGM的に何かの作業をしながら聴くのではなく、その作品の世界観に浸るつもりで聴いてください。
最近ではサブスクリプション(月額課金)制の音楽サービスを利用されている方も多いと思いますが、そういったサービスでは色々目移り(耳移り?)してしまってフルコーラスまで集中力が持たないかもしれません。ですので、個人的にはCDで聴くか、せいぜいプレイリストを作ってそこだけ聴くことに意識しておいてください。
このように、好きな曲をずっと聴き続けていると好きなポイントが明確になってきて、音楽の好き嫌いがかなりはっきりしてきます。
食べ物の好き嫌いは注意されますが、音楽の好き嫌いは自分のオリジナリティを形作るためにも必要なものなので心配いりません。
時間がありましたら、なぜ自分はこれらの音楽にそんなに魅せられるのか、選んだ作品の中で共通点を探ってみましょう。
ただし、アーティストの声質とか歌い方等、音の動きに直接関係のないような部分は除きます
選んだすべてに共通するものを探すのは大変なので、一部の作品に当てはまるものだけでも構いません。
はっきり言ってこれには決まった答えがありませんし、ある意味その答えは自分にしかわからないものなので自分で導くしかありません。
例えば・・・
- 明るい / 暗い 作品が多いなぁ
- テンポが速め / 遅め の作品が多いなぁ
- 一音一音が細かい / 長い 作品が多いなぁ
- ドラムのリズムが細かいものが多いなぁ
などなど、自分なりに共通点を導いてみてください。時間がかかっても気にしないでください。
その共通点が何かしらの「自分なりの心地よさ」と言えます。
最後に:「作曲」と「音並べ」は全く別物です

よく、「作曲」は単に音を並べていくと自然に完成するものだと思われている方がいらっしゃいますが、「作曲」と「音並べ」は全く違います。
例えば次の2つを見て、どちらが意味が分かるものでしょうか?
- 音楽が好き
- がくんがきおす
上の2つはともに「お」「ん」「が」「く」「が」「す」「き」の全く同じ7文字で構成されていますが、上は意味が通じますが、下は全く意味がわかりません。
それと同じで、ドレミファソラシの7音を何も考えず並べていくだけで自動的にメロディになることはなく、並べ方によっては全く意味のわからない単なる「音を並べたもの」にしてしまいます。
上の文字列の意味が伝わるのはやはり同じ、あるいは似た言葉を普段から聞いているためで、下の文字列は普段から全く聞き慣れていないため理解できません。
そういった自然な流れか不自然な流れかは残念ながら「人が教える (人から教わる)」というのには限界があり、音楽の視聴経験の中でしか身に付いていきません。
ですので、作曲ができるようになりたい方はぜひ普段から音楽を聴く習慣を持ち、徐々に範囲を広げて数多くの作品に触れていきましょう。