ここではピアノ・キーボード・オルガンの鍵盤楽器に関する本のレビューをしていきます。定番の本には見出しに[定番]、おすすめの本には[オススメ!]としています。
こちらの記事をきっかけに、あなたに合う1冊が見つかれば幸いです。
取り上げている書籍の中にはすでに絶版のものが含まれている場合があります
『ポップスのピアノ伴奏ができるようになる本』五十嵐洋著 [オススメ!]
ある程度ピアノをかじったことがある人には特に目新しい内容ではありませんが、「ピアノ伴奏ってどうやってするんだろう?」という疑問や、「ピアノで弾き語りをしたい」という願望をお持ちの方にはおすすめできる本です。
この本はあくまで「ポップス」用のピアノ伴奏です。基本的なバッキング法が載っているだけで、リズミックなバッキングや、その他のジャンルについてのバッキングには触れられていません。
ボイシングの鍵盤図(コードフォーム)が載っているので、ピアノ初心者にはおすすめです。
もちろん、作曲にも使えます。ここに載っているバッキングは結構あちこちで聴かれますので、そのまま転用しても問題はないでしょう。ただし何度も言いますが「ポップス用」ですので、ポップス系の作曲に限られますが。
バッキングのMIDIファイルも付いていますので、一部自分なりに変えてみるというのもありではないでしょうか。
『ピアノのコードの押さえ方から弾き方までが身に付く本』古垣未来著
こちらの本はコード別のボイシング(コードをピアノで弾く際の音の並べ方)について解説した内容になっています。
同じ「C(ドミソ)」コードでも、いつもそのまま「ド・ミ・ソ」と並べるだけではありきたりになりがちです。ですので、「ド・ミ・ソ」と並べる以外のボイシングも身に付けておくべきです。
こちらの本ではトライアド型のメジャーコード、マイナーコード、7thコード、5度音が変化したコード、パワーコードなど、それぞれ3パターンずつボイシング法を紹介しています。
五線だけでなく鍵盤図や指番号でも紹介しているので、実際に弾く際の参考にも使えます。
※ただ、指番号はあくまで参考という風に捉えてくださいとのこと
さらに、一般的にはあまり使用度が少ない6thコードやsusコード、add9コード、テンションコードについても載っています。
ただ、これらのコードについては『ピアニストのためのジャズ・コードBOOK』でも取り扱っているので、こちらも参考にされるとより良いと思います。
ただ単にこのコードではこういうボイシング法ができるという以外にも、実際のコード進行上ではどのようになるのかも解説されています。
最後にはよく使われるバッキングパターンについても紹介されているので、実際に弾くだけでなく、作曲(DTMでの打ち込み)にも大いに参考になろうかと思います。
『キーボードバッキングのアイデア"即戦力"138』織原洋子著
鍵盤楽器でコードを演奏するにも、ただ単に全音符や2分音符だけは味気無さを感じてしまいます。
やはりコードバッキング(コード伴奏)のレパートリーは持っておきたいものです。それにはこの『キーボードバッキングのアイデア"即戦力"138』がお勧めです。
あるコード進行に対して3~11パターンのバッキング例があり、全部で138パターンになっています。
本自体は割と厚みが薄めですが、内容はギュッと詰まっている感があります。
カバーしているジャンルは幅広く、ポップス・ロック・R&B・ファンク・ブルース・ジャズ・ボサノヴァなどのパターン例が収録されています。
また、楽器自体も通常のアコースティックピアノのみならず、エレクトリックピアノやオルガン、シンセサイザーで演奏されています。
バッキング方法には基本的には著作権がありませんので、このまま自作曲に活用しても良いかと思います。
もちろんDTMに打ち込んでも問題ないでしょう。実際に弾けなくてもピアノロールに打ち込んでしまえばそのまま適用できるというところに、やはりDTMの勝手の良さがあります。
すべてのパターンにサンプル音声があり、またカラオケ付きですので、実際に演奏練習ができます。
ピアノが弾ける人も弾けない人も、お勧めできる商品です。
『ハモンド・オルガン コンプリート・メソッド』Dave Limina著
ジャズやファンクで多用され、またロックやポップスでも使われる「ハモンド・オルガン」。
※「オルガン」というと「パイプオルガン」をイメージするかと思いますが、パイプの方ではありません
パイプオルガンに限らず、オルガンに関する本は少ないですが、ハモンド・オルガンの教科書ともいうべきなのが『ハモンド・オルガン コンプリート・メソッド』です。
ハモンド・オルガンの特徴といえば、やっぱり「ドローバー」ではないでしょうか?「ドローバー」というのは倍音を調節するモジュールです。
基本的に音には「基音」と「倍音」があります。例えばドを鳴らしたとき、多くの人はドだけが鳴っていると思われていますが、実際にはド以外の音も鳴っています。そのド以外の音が倍音です。
※実際にはオクターブ違いのドやソなど
通常の楽器なら不可能ですが、その倍音をドローバーで機械的に調節することができますので、同じドでも色んな種類のドの音を鳴らすことが可能です。
またそれが「ハモンド・オルガン」の長所であり、面白いところと言えます。
この本の中ではジャンルやタイプ別に応じたドローバーのセッティング例が掲載されているので、「それらしい」音を再現することができます。
その他、エクササイズ用として譜例が載っています。
参考例としてサンプルCDがありますし、マイナスワンも収録されていますので、実際の演奏への助けになるでしょう。
また、この譜例のボイシングやベースの動きを参考に、自作曲に役立たせることができますので、演奏用だけでなくアレンジ用としても使えます。
数少ないハモンド・オルガンの本なので、自作曲にオルガンを入れたい人は持っておいて損なしです。
『弾けない人が生演奏のように打ち込むキーボード演奏レシピ100』氏家克典著 [オススメ!]
こちらはキーボードと言えばこの人というほどの氏家克典さんの著作です。
同著者のDVDシリーズ、『弾けない人が生演奏のように打ち込むキーボード演奏法』の流れをくむ書籍版になります。
「弾けない人」向きであるということは共通していますが、中身はDVDでは紹介しきれなかったものを集めた内容になっています。
「難易度」や「ジャンル」、「〇〇(アーティスト)風」という風にタグが付けられているので、自分の好みに合わせてどこからでも読めるような工夫がされています。
サンプル音声(CD)付きなので、とりあえず一通り聴いてみるのもおすすめです。
五線アレルギーの人でもすぐに読めるように、右手と左手のボイシングは五線ではなく鍵盤図を使って紹介されています。リズムがあるところはリズム譜を使って表されています。
また、各バッキングフレーズには解説と、弾き方のポイントなどもあります。
ただ、どう押さえればよいかはわかりやすいですが、細かく音が動く場合はややこの鍵盤図とリズム譜ではわかりづらいところがあります。
こちらの書籍にはサンプル音声のほかに、MIDIデータも用意されているので(ダウンロード形式)、気になったバッキングはDAWにそのMIDIファイルを取り込んで、動きを確認するというのも有効です。
全体として若干取り上げられている参考曲がやや年代を感じさせるものが多いですが、自作曲に生かせるバッキングもたくさん見つかるのではないでしょうか?
こちらの本が気に入ったら、DVDシリーズもぜひ手に取ってみてください。