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『一番よくわかる楽典入門』木下牧子監修
『一番よくわかる楽典入門』木下牧子監修
タイトルのように「一番よくわかる」かどうかは別として、非常にわかりやすい内容になっています。
項目としては「五線」や「音名」に始まって、「拍子」「音程」「音階」「和音」という風に、一般的な楽典の内容と同じです。
この本のコンセプトは、実際にクラシックの作品の譜例やサンプル音声を使って、目だけでなく耳でも理解してもらおうというところです。
例えば音程では、この音程の音が実際に○○の作品で使われているので、サンプル音声で聴いてみてくださいという風になっています。
実際に知識としてわかっていても、それがどう聴こえるかまでわかっていないと理解したことにはなりません。
そういった意味ではこの本は初心者の方の理解に対して、非常に考えられているなと感じました。
取り上げられているクラシックの作品は名曲ぞろいで、サンプル音声ではほんの一部分しか収録されていませんので、改めて全部聴いてみたいと思えるかと思います。
※CDは全部で99トラック、74分と大容量!
作品の作曲家は、モーツァルト・ベートーヴェン・バッハ・シューベルト・チャイコフスキーなどなど、名作曲家ばかりです。
絵や譜例も豊富で、時折音楽に関するエッセイやコラムもありますので、読み手を飽きさせない作りになっています。
メジャースケールが「長音階」、マイナースケールが「短音階」、セブンスコードが「七の和音」、ディミニッシュコードが「減七の和音」などなど、用語はクラシック寄りになっています。
ですので、今後一般的なポピュラー音楽の理論書を読むときに、クラシックとポピュラー音楽の用語が併記されていれば同一のものだと判断しやすいですが、ポピュラー音楽の用語のみ書かれている理論書だと同一のものだと判断できない場合がありますので、注意が必要です。
個人的には内容はクラシック寄りですが、読み手を理解させようと意図はすごく感じられました。また、該当するクラシックの作品を集めるのに非常に大きな労力がかかっただろうなと思います。
作曲目的でなくても、クラシックが好きな方なら楽しめる内容になっているので、この楽典を一冊持っておいても損はありません。
ちなみに、同ナツメ社・同監修者の「図解雑学 よくわかる楽典」とはほぼ内容(項目・文言・譜例・コラム等)が同じで、『一番よくわかる楽典入門』の方が若干譜例が多く、なおかつ価格が少し安いので、『一番よくわかる楽典入門』の方をお勧めします。